
「親の自宅」を「担保」に介護費用をまかなう!?
「リバースモーゲージ」とは
「自宅」を活用してお金を生み出す制度があります。「家はあるが、月々の年金だけでは介護費用をまかなえない」という場合に役立つ可能性があります。
老後資金等のため自宅(マイホーム)を担保にして銀行や公的機関からお金を借りいれ、死亡した時点で自宅を売却して一括返済する仕組みで、「リバースモーゲージ」と呼ばれています。親自身が住み慣れた家で暮らしながら、生活資金を借り入れることができます。ただし、長生きした場合に、融資額が融資限度額に達してしまうなどのリスクも考えられます。
もともと1981年ごろ、東京都武蔵野市で開始された事業ですが、貸与金を全額回収できない事例なども発生。低所得者向けには国も同様の制度を実施しているなどの理由で、2015年に修了しています。一方、最近では都市銀行、地方銀行などで実施しているところが増えています。金融機関ごとに内容は異なるので、検討する場合は、詳細をしっかり確認することが必要です。
「不動産担保型生活資金」の窓口は社会福祉協議会
国が実施している同様の制度は、「不動産担保型生活資金」といいます。低所得者の高齢者向けで、地域の社会福祉協議会が窓口となっています。
現在住んでいる居住用不動産(土地・建物)を所有し、将来にわたって住み続けることを希望する高齢者世帯に対して、その不動産を担保として生活費の貸与を行う制度であり、その仕組みは「リバースモーゲージ」と同じです。
- 対象者 65歳以上の高齢者世帯(低所得)
- 対象不動産 土地評価額が 1,000 ~ 1,500万円以上(地域により異なる)一戸建て
- 貸与月額 30 万円以内
- 付与限度額 土地評価額のおおむね 70 %
- 貸与期間 貸付元利金が貸与限度額に達するまでの期間
- 返済 貸与契約終了時(借受人の死亡など)に不動産を売却し一括償還(返済)
- 窓口 親の暮らす地域の社会福祉協議会
銀行の「リバースモーゲージ」同様、想定した以上に長生きした場合に、お金を借りることができなくなり、しかも利息は払わなければいけないなどリスクはあります。死亡する前に、限度額に達した場合、貸与は停止します。住み続けることは可能ですが、限度額到達以降も貸与利子は発生します。
また、子どもが同居している場合は、制度の対象外です。さらにマンションも含まれません。
例えば、自宅(マイホーム)の評価額が 3,000 万円の場合
貸与限度額は評価額の 70% なので、 2,100 万円(利率年 3 %)
- 貸与月額 8 万円の場合 → 貸与期間は 17 年 11 ヶ月
- 貸与月額 10万円の場合 → 貸与期間は 14 年 11 ヶ月
「親の自宅」を「賃貸」して生活資金が得られる?
所有権がなくならない「マイホーム借り上げ制度」
ここまでの「リバースモーゲージ」は自宅に住み続けながら生活資金を得ることができますが、死亡した時点で自宅の所有権はなくなります。対して、所有権がなくならない「マイホーム借り上げ制度」というものもあります。ただし、自宅を貸し出すため、そこに住み続けることはできません。
一般社団法人移住・住みかえ支援機構( JTI ) が実施する制度で、シニア世代が自宅を貸し出すシステムです。通常の賃貸との違いは、 JTI が借り上げて一般の人に転貸する点で、終身にわたって借り上げられるので、例えば高齢者施設の支払いなどにあてることも考えられます。
3年毎に契約が終了する定期借家契約を活用しているので、貸借人が居座ったり、立ち退き料を請求されることもありません。3年の定期借家契約終了時に自宅に戻ることや、売却したり、子へ相続することも可能です。
自分で管理するより手取りは低い
制度申し込み後、1人目の入居者の決定以降は、空室が発生しても想定の最低賃料が保証されます(査定賃料下限の 85 % が目安)。ただし、当然ながら自分で管理するよりも収入は低くなります。もともとの設定賃料が相場よりも 10 ~ 15 % 程度低く抑えられているのに加え、諸経費(賃貸料の 15%)もかかります。
申し込み後は、建物診断や補強・改修工事の実施、入居者の募集など、最終的に3〜5ヶ月ほどかかるようです。検討する場合は、早めに親の意向を確認しながらしっかり準備しましょう。
マイホーム借り上げ制度のメリット・デメリット
メリット
- 家が空いたとしても最低賃料が保証されるので、高齢者施設などの資金に活用できる
- 3年ごとに解約の自由があり、自宅に戻ることも可能
- 土地や建物は売却せず、子に相続させることも可能
- 家賃の未払いなど、賃借人とのトラブルに直接対応する必要がない
デメリット
- 設定賃料が相場よりも 10 ~ 15% 程度低い
- 毎月の賃料に諸経費(賃借料の 15%)がかかる
- 借り上げの歳の「建物調査」により、補強、改修(耐震工事など)が必要となると費用がかさむ