
食事の用意のために実家に通うのは無理……
「配食」は多くの自治体が実施。民間も増加
心身の具合が悪くなると、食事の用意が難しくなることがあります。特に、親だけで暮らしているケースでは心配です。そこで役立つのは食事の宅配サービス。このサービスは、介護保険サービスにはありません。どこが提供しているかといえば、多くの場合、自治体が独自サービスとして行っており、また地域のボランティア団体などが実施している場合もあります。さらに、民間企業の参入も年々増加しています。
自治体サービスの場合は、助成があるので比較的安価です。ただ、自治体サービスは対象となる条件があり、必ずしも利用できるとは限りません。毎日は提供していないというところもあります。
自治体やボランティアサービスに適当なものがなければ、民間サービスをあたらるといいでしょう。試食ができれば、親の嗜好にあったところを選ぶことも可能です。気をつけたいのは、食事をするのはあくまで「親」だということ。しばらく利用すると、「味に飽きた」と親が言い出すことはよくあります。また「親世代は昔ながらの薄味日本食が好み」という思い込みから、親の嗜好を確認せずにサービスを決めてしまうケースも耳にします。もちろん、そういう嗜好を持った方も多いですが、自分の親が本当にそうなのかは必ず確認するようにしましょう。
情報をたくさん集めていれば、嫌がる親に「それでも、食べろ」と言わずに、他のサービスに変更することもできるでしょう。
手渡しなら安否確認も兼ねる
配達は「手渡し」を原則としている事業者も多く、安否確認にも役立つ可能性があります。なかには、利用者に異変があった場合に家族などに通報してくれるところもあります。
実際、食事の宅配業者が家のなかで倒れている高齢者を早期発見した事例や、不幸にして亡くなっている高齢者を発見した事例をしばしば耳にします。
自治体が実施する食事の宅配サービス例
利用対象者
- 介護保険の要支援・要介護認定者、または虚弱で調理が困難な方
- 60歳〜65歳以上
- 一人暮らし、または高齢者のみの世帯など
費用負担
1食あたり数百円
主なメリット
- 栄養バランスのとれた食生活
申込時に昼食や夕食を選択でき、おかゆ、やわらか食などの選択も可能。減塩、カロリーコントロールなども配慮。 - もしもの場合の安否確認
配達は直接手渡し。利用者の健康状態に異常が見られる場合は、委託事業者から緊急連絡先や関係機関に連絡
その他の特徴
- 配達の際は安否確認を必須とし、利用者の様子を確認したり声掛けを行う
- 利用可能な事業者の数、1日の利用回数に制限がある場合も(1日1食まで、2食希望する場合は1食が保険給付対象外となるなど)
- 複数の事業者から、メニューや代金、配達時間などを基準に利用者が選べる
緊急通報やおむつ給付なども自治体サービスで
自宅に居ながら緊急通報できるシステム
ほとんどの自治体で、「緊急通報システム」というサービスを提供しています。内容や利用条件は自治体ごとに違いがありますが、多くは、一人暮らしの高齢者がペンダント型の緊急ボタンを身につけておくものです。具合が悪くなったときなどにボタンを押せば、地域住民あるいは警備会社の職員などが駆けつけます。利用料は無料という自治体も多く、有料の場合でも補助があるので低額です。
全額自費でもよければ、民間からもさまざまなシステムが販売されています。
機器ではなく、行政から委託を受けた見守り支援員等が自宅を訪問して、変わった様子がないかを確認したり、話し相手になったりするサービスを提供する自治体もあります。
おむつは現物給付、現金給付などいろいろ
紙おむつの給付を行う自治体も多いです。現物給付であったり、購入費支援であったりと、その内容はいろいろです。
その他、高齢者宅の住宅改修費の助成を行う自治体もあります。介護保険制度での住宅改修費と合算して利用できれば、より安心安全な住まいにできるでしょう。
各自治体では、高齢者向けにどのようなサービスを実施しているかを一覧にした印刷物を作成しています。役所や地域包括支援センターに行った際にもらっておくと、今後の問い合わせがスムーズです。自治体によっては、ホームページ上で紹介しているところもあるので確認してみましょう。
介護保険以外の主な福祉サービス
- 食事の宅配サービス
居宅に定期的に訪問して、栄養バランスのとれた食事の提供と、安否確認を行う - 日常生活用具の給付
電磁調理器、火災報知機、自動消火器、布団乾燥機を給付 - 高齢者住宅改修費助成
住宅改造に要する費用の一部を助成 - 高齢者紙おむつ給付
大人用の紙おむつを給付 - 在宅理美容サービス
訪問理美容を行う - 在宅高齢者移送サービス
リフト(スロープ)付きの福祉タクシーを利用して、通院等にかかる運賃の一部を助成
自治体が実施する緊急通報システムサービス例
概要
緊急ボタンを押すと、消防の司令センターなどに通報され、近隣の協力者や救急車が駆けつける。
利用対象者
- おおむね65歳以上で一人暮らしまたは高齢者のみの世帯
- 急病や事故などの緊急時に自分で対処するのが難しい人
費用負担
無料か、有料でも低額(通話料がかかる場合も)